こんにちは。
今回は、皆さんが普段から使っている「駅」に着目します。
駅は「まちづくり」を考える際、基軸となる施設の一つです。最近では多くの主要駅を中心に駅のリニューアル工事を多く行っていますね。特に大都市圏では老朽化した駅舎の改修だけではなく、混雑緩和のために通路を広げることや連続立体交差化事業など線路を移し替える際に駅を新しくすることがあります。
ここでは大都市圏では珍しい、木を使った駅のリニューアルをご紹介します。実際に駅にも訪れましたのでその様子もまとめていきます。
1. 住宅街に囲まれた小さな駅が大変身!
JR山手線 五反田駅から東急池上線で2駅。そこが今回の目的地です。
©CCBYSA ©OpenStreetMap contributors
その名も「戸越銀座駅」
名前の通り、駅前には商店街があります。2016年12月に駅舎のリニューアルを行いました。2017年にグッドデザイン賞、2018年に土木デザイン賞 奨励賞を受賞しています。(参考文献1・2より)
駅舎を見てみるとびっくり。なんと駅舎のほぼ全てが木で出来ています!新しい駅といえばコンクリートや鋼に覆われた無機質なイメージがありますが、この駅は何か暖かい雰囲気がありました。
駅には、木のベンチや駅周辺の観光マップが。なんとなくこの駅に立ち寄ってみたくなるような仕掛けが多くありました。
2. 「木」を使って駅をリニューアルしたのはなぜ?
しかし、なぜ木材を利用してリニューアルを行ったのでしょうか。もちろん地元住民からの要望も背景にありました。しかし、駅舎を造る上でも木材を利用したほうが良いと判断した理由は周辺環境にあります。周辺は住宅が密集していて、工事のスペースを確保すること自体が困難でした。さらに、電車の架線等にも配慮すると大型のクレーンを導入することも困難でした。
そこで木材の出番です!木材はコンクリートや鋼等よりも軽いので造りやすいのです。さらに出来るだけ工場で加工し、現場で最低限の加工や組立て等を行うことで周辺環境への影響を最小限に出来たそう。(参考文献3より)
東急電鉄は「木になるリニューアル」として駅のリニューアルをスタート。地域と一体になって進めてきました。例えば、今回のリニューアルで使用した木材が作られている多摩の森林や製材工場を見学するツアーや駅を利用する人々の声を集めるイベントを実施。そして、東京23区内では初の新しい木造駅舎としてリニューアルを果たしたのです。(参考文献4より)
東急電鉄では、さらに木を使ったプロジェクトを進めています。東急池上線旗の台駅でも同様なリニューアルをしました。(参考文献5より)
3. 背景にあるのは「森林の保全」だが…
最近では、地方を始めとして、木材を使った建築物が次々と誕生しています。この動きの背景には「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」という法律が制定されたことにあります。(参考文献6より)
2010年に制定された法律。森林の手入れが十分に行われていないことを背景に公共建築物で木材を積極的に利用してもらう目的で制定されました。
ただ、「木材の構造物を造れば、社会貢献になる」という考えが先行してはいけないということを改めて認識する必要があると思います。木材にも当然、弱点があります。コンクリートや鋼と比べて壊れやすかったり、メンテナンスが大変になったりします。せっかく造っても、すぐに使えない状態になってしまえば、木材を無駄に使ってしまったということになります。あくまでも木材は「一つの選択肢」であって、上手く利用すること(安全性、使用性を考慮すること)が出来なければ意味がありません。
しかし、最近では駅など比較的大きな構造物でも十分に利用できるようになって来ています。今後も多くの駅で木材を用いたリニューアルが行われるかもしれません。「木の温もり」を最大限に生かした建物がたくさんできるといいですね。
参考文献
- 東急電鉄「12月11日(日)東急池上線戸越銀座駅「木になるリニューアル」が竣工」, https://www.tokyu.co.jp/file/161125-4.pdf,2016-12-11, (2020-03-28 閲覧)
- GOOD DESIGN AWARD「東急池上線戸越銀座駅」, https://www.g-mark.org/award/describe/45749,2017, (2020-03-28 閲覧)
- GOOD DESIGN AWARD「東急池上線戸越銀座駅」,http://designprize.sakura.ne.jp/archives/result/1087,2018, (2020-03-28 閲覧)
- 木村礼夫「東急線戸越銀座駅の“木になるリニューアル” 施工見学会に参加して」, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwpa/43/1/43_28/_pdf/-char/ja, 木材保存, 43巻 1号, p.28-31, 公益社団法人 日本木材保存協会刊,2017, (2020-03-28 閲覧)
- 東急電鉄「7月31日(水)池上線旗の台駅「木になるリニューアル」が竣工します」, https://www.tokyu.co.jp/image/news/pdf/20190729-1.pdf,2019-07-29, (2020-03-28 閲覧)
- 林野庁「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」, https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/koukyou/, 2020-03-24, (2020-03-28 閲覧)