今回は、「固有周期」について簡単に紹介していきたいと思います。
周期は分かる。固有、、、?
そもそも固有周期は、土木の世界では、耐震工学や構造振動学の世界でよく出てくる用語の一つです。
ちなみに、個人的に耐震工学や振動学の本でわかりやすく、オススメなのはこちらです。

「応用土木振動学 構造物の振動と耐震設計」という本もオススメです。(商品リンクが挿入出来ませんでした・・・興味ある人は調べてみてください。かなり古い本ですが。)
振動学の本については建築と付いてますが、十分に、大学土木の勉強の中で活かせます。(個人的見解です。)
むしろ私は大学4年生の時の卒業論文はこの本にすっかり頼りっきりでしたし、非常に助けられました。
さて、用語の説明に戻ります。周期については、皆さんもご存知ですよね。
そうです、ある場所から、元の場所まで戻ってくるまでの時間のことで、単位は(S)や(秒)で示されることが多いですよね。
では、「固有」とは何でしょうか。
私が振動工学を学び始めた時、ちょっとピンと来ませんでした。
しかし、何の事はありません。構造物などが独自に持つ周期のことを、固有周期と称しているだけなのです。
なので、皆さんの周りにある構造物は一つひとつ独自の周期を持っています。
何かを学ぶ時、用語などを見た際に、「あーこういう名前なのね」ではなく、用語の持つ意味を考え、知ることで、一気に面白さが増すのは私だけでしょうか。
固有周期はどうすれば分かるのか?
固有周期とは、どんなものなのか先程の説明で大体分かって頂けたと思います。
では、構造物が独自に持つ、最も地震に対して揺れやすい周期とは、どうすれば分かるのでしょうか?
土木振動工学の教科書には下記の様に書いてあります。
$$T=\frac{2\pi}{\omega}$$
この式中にある、は、固有円振動数(単位は、1/s)と呼ばれます。
ちなみに固有周期と同じく語られるのが、固有振動数fで、算出方法は以下です。
$$f=\frac{1}{T}$$
このfは、frequnencyの頭文字の事です。なお、固有周期は、Tではなく、Pと書いてあることもあります。periodの頭文字の事ですね。
昔の本を見ると、構造物の固有周期のことをPと書くケースも見られる印象です。
振動工学の入門では、よく構造物を串団子モデルと言うモデルで単純化して考え、構造物の様々なパラメーターを計算します。
下記の様なものです。串団子でしょ?
この画像中の、mは構造物の重量で、kは構造物の剛性、cは構造物の減衰係数、xtというのは、地震動が作用した構造物の変位を示しています。
なお、固有円振動数はmとkを使って算出することが出来ます。
$$\omega=\sqrt{\frac{k}{m}}$$
なお、この算出方法は数学的に証明出来るので、興味ある人はぜひ運動方程式を立てて、解いてみてください。紙と鉛筆を使ってガシガシやるの楽しいですよね。
ちなみに、建物の固有周期を概算する方法もあります。
鉄筋コンクリートの建物の場合では、建物高さ(m)×2%= 固有周期(秒)で概算できます。
固有周期と地震動の関係。共振は怖い。
固有周期やそれに付随するパラメーターの計算方法が分かったところで、、、
実は、地震動が作用した際、固有周期との関係で、建物の被害の大きさが違ってきます。
まず、地震動というのは、様々な周期を含んだ波の集合体で、周期毎によって持つ威力(本では加速度や速度や変位と表現する)は違います。
ということは、もちろん最も大きい威力を持つ周期が地震波には存在します。
なお、地震動が周期毎にどれだけの威力を持つかの解析は、フーリエ変換ができれば、誰にでも知ることが出来ます。
厳密には、高速フーリエ変換という技術を使います。
その最も大きい威力を持つ周期と構造物の固有周期が近ければ近いほど、「共振」という現象が起きてしまいます。
共振については下記の動画でその怖さが十分分かると思います。周期ごとに揺れの大きさが違っているのが分かると思います。
ちなみに、地震動だけでなく、風によって起きる共振も存在します。最も有名な風による共振で崩壊したケースは下記動画で確認出来ます。
アメリカのタコマナローズ橋の崩壊動画です。
動画にもある通り、共振が一度起こってしまえば、非常に危険な状態となってしまうことがわかります。
固有周期を知ることは非常に大事!
以上のことから、耐震設計をする上で、固有周期を知ることは大前提であることが伺えます。
土木技術者以外の皆さんも、もし興味があれば、自身が住む家やアパートの固有周期について調べてみてください。
あと、過去に発生した有名な地震で、最も大きな威力を持つ周期と、自身が住む家やアパートの固有周期を比較してみるのも面白いと思います。
もう少し発展系であれば、応答スペクトルという非常に便利な考えかたがあるのですが、それはまた次回で。