今回は、自分が2月下旬に参加した、比企の川づくり協議会主催の
「河川見学会・水害シンポジウム」でのレポートをまとめていきます。
河川見学会に参加してみた
知り合いの方から紹介を受け、参加したのは「河川見学会・水害シンポジウム」。
2019年に大きな爪痕を残した台風19号による被害はどんなものだったのか、
そして現状どこまで復旧しているのかを午前中に視察、
午後は3人の先生による講演会を中心とした「水害シンポジウム」でした。
今回は、午前中の視察を中心に書いていきます。
埼玉県の台風19号被害
埼玉県では、3ヶ所で堤防が決壊し、市街地が浸水する地域もありました。(後述します)
さらに、一級河川の荒川と利根川の水位が上昇し、
ダムがなければ外水氾濫も起きていたかもしれないと言われました。
(もちろん賛否はありますが、今回は省略します)
その中で今回、視察の対象となったのは、
・台風19号襲来以前から復旧工事が行われていた都幾川「稲荷橋」付近
・くらかけ清流の郷(鞍掛橋付近)
・都幾川「早俣橋」付近
です。
ここからは台風19号によって被害が出た2箇所の被害状況について、
市役所・荒川上流河川事務所の方による説明や筆者撮影の写真とともに見ていきます。
被害の現状
くらかけ清流の郷(鞍掛橋付近)
くらかけ清流の郷というキャンプ地には、冠水橋である「鞍掛橋」がかかっています。
台風19号によって大量の雨水が都幾川に流れ、水位は上昇しました。
その結果、冠水橋で流木や土砂が詰まるという事態が起きました。
9月10日(木)、東松山市の鞍掛橋では、昨日の大雨で橋に乗り上げた流木等の撤去作業が行われています。職員一丸となって、復旧に取り組んでいます。 #東松山 pic.twitter.com/EaxmzWMSnO
— 東松山市公式 (@e_matuyama_city) September 10, 2015
さらに、このキャンプ地付近は川の流れが蛇行するポイントでもあり、
川沿いの護岸や遊歩道の多くは流されてしまいました。
2020年2月下旬時点では復旧工事により、
斜面にコンクリート舗装が施されたり、遊歩道の再整備が行われていましたが、
流出土砂が河道内に多く残り、多くの重機を投入した掘削・撤去工事が続けられていました。
都幾川堤防決壊箇所(早俣橋付近)
2箇所目は、都幾川の堤防決壊箇所でもある、早俣川付近でした。
ここでは、荒川上流河川事務所の方による説明がありました。
結果的には、この東松山市で2名の死者が出ており、浸水家屋は500戸以上に及んだそうです。
担当の方の説明によると、
堤防を越水し、その水によって洗堀された結果、堤防が破堤(決壊)し、雨水が流出したようです。
現在は、緊急復旧工事により盛土と大型ブロックによる施工が見られましたが、
これは昨年10月ごろの台風襲来に備えた仮のもので、
今後改めて改修するとのことでした。
そのため、特別に土粒子の大きさを調節したものではないとのことでした。
また、堤防決壊により周辺地域には大量の水が流出したために、
多くの家屋に被害が出ました。この水を排水するために、全国各地から
排水ポンプ車が稼働したとのことです。
改めて確認すると、ハザードマップの浸水区域と重なることが確認されているとのことで、
ハザードマップの重要性も改めて感じました。
下の写真は現地の写真ですが、見て分かるように堤防脇に鎮座していた小剣神社は全て流され、
周辺の田んぼに瓦礫が残っている様子がわかります。
この神社には、弁財天の眷属である十五童子が彫られている石像があったことがわかっています。
弁財天は、もともと水の女神ですから、水からこの地を守るために鎮座していたのかもしれません。
今後の課題と現場での開発
今後は、ハザードマップの確認やマイタイムラインの整備など、
ソフトの整備だけでなく、河川事務所や施工会社などによるハードの整備も
進められるとのことです。
ハザードマップについてはこちらから。

その中で、担当者の方から紹介された対策について紹介します。
1つ目は越水・決壊を検知するための機器の開発です。
これは堤防にセンサーを配備し、検知した際には
ネットワーク経由でサーバーへと情報を集約し、
河川事務所などでリアルタイムに確認できるシステムです。
今回の被害では、決壊箇所の確認をするために、実際に現地に足を運ぶ人がいたり、
河川事務所の方が早朝にヘリコプターを飛ばさないと現地を確認できないという状況がありました。
そのために、オンライン環境を用いて検知することで、
防災情報の共有にも繋がると考えられます。
また、同時に設置するカメラの台数を増やすことも検討されているようです。
2つ目は、ハイブリッド型遊水地というものです。
https://www.pref.saitama.lg.jp/a1007/kasen/documents/09siryousan.pdf
「荒川水系河川整備計画(変更)(骨子)」国土交通省 関東地方整備局より
内水氾濫とは、「堤防から水が溢れなくても、河川へ排水する川や下水路の排水能力の不足などが原因で、降った雨を排水処理できなくて引き起こされる氾濫」のことです。一方の外水氾濫とは、「河川の堤防から水が溢れ又は破堤して家屋や田畑が浸水すること」です。
これは、外水と内水の両方に対応する遊水地のことで、
通常の遊水地と同じように本川や支川の水位下げることはもちろんですが、
内水にも対応した遊水地を設けるというものです。
現在は、各地の治水プロジェクトの中に検討事項として盛り込まれており、
開発が急がれているようです。
参考 入間川流域緊急治水プロジェクト国土交通省荒川上流河川事務所
ここまで、見学会のレポートをしてきましたが、台風だけに限らず、
全国各地で災害による被害があります。さらにその場に行くと土木をより身近に感じられ、
実際にどのようなことに学んだ学問が生かされているのかも感じられます。
参考文献
・http://www.city.shimanto.lg.jp/i/kankou/kankouti/tinka.html 「沈下橋」四万十市