昨今、民間ビジネスとしてのロケット開発や人工衛星開発が世界的に盛んになっています。
その市場規模は、2000億ドルとも言われ、次から次へとベンチャー企業が調達をしたというニュースが飛び交っています。
その中で、人手不足を補うことやスマートシティ化に活かすため、建設業界でも衛星データ利用が促されているところです。
今回は、衛星のデータの種類やどんな活用法が期待されるのか、衛星データを利用する上での課題などをまとめていきます。
衛星データの種類
そもそも、どれくらいの人工衛星が地球の周りを飛び回っているのでしょうか。
地球を周回する人工衛星の数は、一般に5000基程度と言われています。今後もさらにその数は増える予定で、アメリカの民間ロケット会社のスペースXでは「スターリンク」計画を立ち上げ、1万2000基の人工衛星を上げる計画も存在します。
(2020年3月の時点で既に5回打ち上げを成功させ、スターリンク計画の内、300基は周回しています)
スペースXのスターリンク計画は衛星通信網を整備するものですが、他にも人工衛星にはたくさんの種類があります。
今回は代表的なものを簡単に紹介します。
光学衛星
光学衛星では、「可視光」と「近赤外」の光を集め、上空からの写真を集めるようにデータを収集しています。
しかし、地上で使うカメラと同じようなものであるために、夜間や雲のある場所では撮影することができません。
下のリンクのLandbrowserを見るとわかりやすいと思います。
SAR衛星
SARはSynthetic Aperture Radarの略で、合成開口レーダーと呼ばれます。
SARでは、マイクロ波を発射して地表から跳ね返ってきたマイクロ波を捉えています。これにより光学衛星では撮影することのできない夜間や雲のある場所でも撮影することができます。
https://www.eorc.jaxa.jp/ALOS-2/img_up/alos2_1st/jpal2_1stimg_20140619-21.htm
「陸域観測技術衛星2号『だいち2号』(ALOS-2)の初画像取得について」JAXA 第一宇宙部門より
GNSS(GPS)衛星
一般的には、GNSS(Global Navigation Satellite System、全球測位衛星システム)と呼ばれ、位置情報を測位する際などに使われます。GPS(Global Positioning Systemu)はアメリカが開発した衛星システムの名前ですが、当初は民間に公開されたデータの代表として馴染みのある言葉だと思います。
GPS以外にも、GLONASS、Galileoなど他の国でも開発されデータ利用されています。日本でも準天頂衛星(QZSS)によるセンチメートル級の測位が可能になるなど、より細かい位置情報システムが提供され始めています。
こちらの宙畑のサイトも参考になります。
建設業界で期待される衛星データ活用
建設業界でも既に衛星データ利用がされていますが、更なる利用を推進するべく、JAXAの衛星利用推進サイトが設けられています。
このサイトを見ると、衛星データ利用分野の半分が建設業界と関連する分野であることがわかると思います。
この中から抜粋していくつか紹介します。
・防災、災害分野
この分野で期待されることは、災害発生時に一刻も早く被害状況を把握することです。
また、地殻変動等のデータも提供されることで、構造物や建築物の建設時への活用が期待されています。
・地理情報分野
この分野では、人工衛星の撮影したデータと地上でのデータを重ね合わせるGIS関連での利用が期待されています。
その結果として、ハザードマップや交通・物流への応用に役立てられるとしています。
・エネルギー資源分野
資源探査の時の有望な地域の選定にも衛星データは活用できるとしています。
スペクトル等の観測によって、含有される鉱物の種類まで特定できるそうです。
今回は省略しますが、他にも多くの活用が期待されています。
衛星データを活用する上での課題
ここまで衛星の種類や衛星データ利用について書いてきましたが、まだまだ利用しきれていないのが実情です。
その利用の障壁となっていることは2つあるといわれています。
まず1つ目は、衛星データの分解能の問題です。まだまだ日本で利用できる衛星データは少ないと言われます。
分解能とは、いわゆる解像度のことで、どれくらいの解像度でデータを見ることができるかで、利用方法が変わってきます。もしインフラの維持管理で利用するのであれば、より解像度の高い衛星データが求められると思います。
現在では、たくさんの宇宙ベンチャーが生まれ、その多くが衛星データ活用・人工衛星製作と言われています。
今後の技術の発展も期待されています。
https://news.mynavi.jp/article/20180403-610335/
「宇宙にリベンジ! – 観測ロケット「MOMO」2号機が4月28日に打ち上げ」マイナビニュース より
次に2つ目の課題ですが、これは人工衛星の観測頻度についてです。
一般的に人工衛星は地球の周回軌道にあるため、リアルタイムで常に日本を監視するためには同じ種類の衛星でも複数基を周回させる必要があります。しかし、人工衛星の打ち上げにかかるお金やロケットの打ち上げ頻度の問題から、すぐに複数の衛星を周回軌道に投入できる状況にはなく、衛星データの観測頻度が低く利用の障害となっているのが実情です。JAXAや政府は、今後H3ロケットを2020年度から打ち上げ始めることを発表していますが、
その他のロケットベンチャー企業の活躍もあり、今後は打ち上げ頻度が多くなることが期待されています。
参考文献
・「海外展開戦略 概要 (平成30年4月)」内閣府 https://www8.cao.go.jp/space/vision/abstract.pdf
・「GNSSとは」国土地理院 https://terras.gsi.go.jp/geo_info/GNSS.html
・「陸域観測技術衛星2号『だいち2号』(ALOS-2)の初画像取得について」JAXA / EORC https://www.eorc.jaxa.jp/ALOS-2/img_up/alos2_1st/jpal2_1stimg_20140619-21.htm