沖出しとは?

沖出し

沖出しとは

沖出し
海上における津波避難方法の一つに沖出し避難といわれるものがある。これは、津波の影響の少ない深い水深が確保できる沖合に船舶を進める避難方法である。

海上津波避難マップ作成を通じた漁船の避難方法に関する実践研究〜三重県南伊勢町を事例として〜」小池則満 土木学会論文集D3(土木計画学)Vol73, No.5 (土木計画学研究・論文集第34巻) ,I-45〜I-55,2017 より引用

 

 

この論文では、上のように説明されています。

 

津波の際、港に固定してある船が波に流されてしまうとそのまま陸に上げられ,建物とぶつかったりして船が壊れたり場合によっては人の命も危うくなる可能性があります。

一般的に漁船一隻あたりの値段が高いことから「壊れるリスクを下げたい」という思いなどから,沖に船を出す「沖出し避難」がされます。

 

沖出しのルールについて

水産庁による「災害に強い漁業地域づくりガイドライン」では、漁業地域の安全確保のために「陸上にいる場合」と「海上にいる場合」などに状況を分けた避難行動のフローを提示しています。

参考 災害に強い漁業地域づくりガイドラインDATA.GO.jp

 

“https://www.jfa.maff.go.jp/j/gyoko_gyozyo/g_hourei/pdf/0525_4_5.pdf” p.70 「図-IV-5 避難行動の基本ルールのフロー」を参考に筆者が作成

 

基本的には、地震発生時にいる場所で

1. 陸上に逃げるほうが早い場合

2. 避難海域に逃げるほうが早い場合

と分けて考えています。

 

1の場合はもちろん高台など津波の届かない場所まで避難するべきですが、

2の場合は、実際にどれくらいの距離まで沖に出ればいいのか地域によって異なります。

このため、海の津波ハザードマップを作るなどして対策をしています。

 

しかし、実際には上のルールを守らずに、漁業関係者の勘で動く場合も多いそうですが、

これは「沖出しに関する実際の事例(第3章)」で紹介します。

 

先ほどの「災害に強い漁業地域づくりガイドライン」は2012年に策定されたものですが、過去の津波被害などを参考に、独自のルールを作っている地域もあります。

 

その一つが,岩手県の吉浜漁港です。

岩手県大船渡市三陸町の吉浜漁業組合では、2019年6月に沖出しに関するルールを策定して公表しています。

 

https://tohkaishimpo.com/2019/06/29/255574/ WEB東海新報「『沖出し』ルールを策定 津波発生時の”目安”に 吉浜漁港が漁業者らに公表 大船渡」 2020年2月10日閲覧 より引用

 

公表されたルールでは、

「陸上滞在時は船外機船と動力船どちらも原則に『沖出ししない』」(”上のWEB東海新報記事” より引用)としており、海上滞在時に関しては滞在場所や発令された警報の種類、時間などによって下のようなルールを設け、判断材料としています。

 

海の津波ハザードマップのような広域のものではなく,漁港単位で

“どんな状況の時に、陸からどれくらい離れた沖まで逃げる必要があるのか”を提示しています。

今後もこのようなルールが作られることが期待されます。

 

沖出しの危険性について

 

漁業関係者にとっては、もちろん漁船は大事な資産だと考えますが、

人命を第一に、と考えた場合には前章のようなルールに則って避難行動をすることが大切です。

 

では、沖に避難するときの避難海域はどのような条件のもとに考えられているのでしょうか。

参考 津波による船舶被害軽減のための避難海域に関する検討J-STAGE

 

避難海域でももちろん津波は襲来します。

津波襲来時に船舶が安全である条件を、上の論文では

砕波が発生しない水深」と「津波により生じる流れによって操縦不能となる限界流速以下

としています。

 

砕波とは
風浪が発達すると波長も波高も増大しますが、波高の増加率の方が大きいため、波の形状は次第に急峻になります。また、沖合から浅海域に進入した波も浅水変形により波高が増大する一方で波長は短くなるために急峻な波形となります。急峻な波形が限界を超えると、前方に飛び出すように崩れ落ちて白波が発生します。この現象を砕波と呼びます。(以下リンクより引用)

参考 波浪の知識気象庁

 

詳しい水理実験の様子や計算式、論文の参考文献等は今回は省略するためリンクを参照していただきたいですが、

それぞれの計算式のパラメータには、水深が含まれます。

そのため今まで紹介してきたような様々なルールの中に、理解がしやすい水深が提示されているのですね。

 

沖出しに関する実際の事例

 

この沖出しは,もちろん東日本大震災の際も行われました。

詳細はこちらの記事で取材されています。

 

もちろん、運よく沖に出て津波から逃れた船もありましたが、その一方で波にのまれ大破した船もあったそうです。

事前にどれくらいの距離の沖まで出る必要があるのか、そこまでどれくらいの時間がかかるのかなどを知っておくことの重要性を強く感じます。

 

また、土木に関わる一人として、正しい知識をたくさんの人に知ってもらう必要性も感じます。

 

参考文献

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejipm/73/5/73_I_45/_pdf/-char/ja

「海上津波避難マップ作成を通じた漁船の避難方法に関する実践研究〜三重県南伊勢町を事例として〜」小池則満 土木学会論文集D3(土木計画学)Vol73, No.5 (土木計画学研究・論文集第34巻) ,I-45〜I-55,2017

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/proce1989/53/0/53_0_1356/_pdf

「津波による船舶被害軽減のための避難海域に関する検討」風間隆宏 海岸工学論文集 第53巻(2006) 土木学会1356-1360

 

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